「中国経済は破綻寸前?」「習近平は孤立無援?」日本人が抱く〈大きな誤解〉を国際政治学者・佐橋亮氏が一刀両断する
1: 昆虫図鑑 ★ 2026/09/24(木) 08:17:15.28 ID:ZQC97RFY
国際政治学者の佐橋亮氏が、「底線」という言葉を軸に国際情勢を考える連載「 底線思考 」。第3回では中国の現在地について考察した。
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中国への日本人の誤解
日本には、中国に関して三つの負のイメージがあるように見える。実のところ、中国専門家ですら、こうしたイメージを繰り返し再生産したりもする。第一に、中国経済は破綻に向かっている。第二に、中国では権力闘争が常に激しく、また最近では軍との関係にも緊張が見られ、それが危機につながりかねない。第三に、国際的には孤立を深めている。こうした決めつけは、必ずしも正しくない。今回は中国の実像に迫ってこれらのイメージを検証する。そこから見えてくる本当の中国の危うさは、習近平の下で国家の物理的な強靭さを高める一方で、判断の修正を行うための柔軟さに欠け、世界情勢の見極めにも誤算の余地を残すことにある。それが私たちの底線を破りかねない。
中国経済は、確かに近年、全てが順風満帆というわけではない。不動産がその典型例だ。しかし、依然として強さもある。科学技術のエコシステムは、アメリカが舌を巻くほど良く構築されている。中速に成長する製造・技術大国と、低温の家計・不動産・民間経済が同居していると考えるのがよいだろう。
GDP成長率は、今年上半期で4.7%。付加価値額でみると装備製造業は9.3%増、ハイテク製造業は13.3%増である一方、不動産開発投資は減少し、民間投資やインフラ投資も減少を見せている。それは、中国政府自身が認めているところだ。
中国経済の強み
しかし、戦略産業の生産力、外国企業を引き留める競争環境は確かなものだ。中国の製造業の付加価値シェアは2024年に世界の32%に達している。多国籍企業は、中国内に残りつつ、中国外にも拠点を増設するように動いている。中国市場向けの事業は中国内部で完結させ、中国外の市場向けには、中国以外の供給・生産能力を増やす。そして中国内では、中国企業との連携を深めている。一見すると矛盾したこの動きの背景には、「中国で戦わなければいけない」という強い確信がある。中国が安い生産拠点ということではない。中国で中国企業と競り合うことが、世界で中国企業と競争するための学習の場になると考えている。米中ビジネス評議会は、中国は企業のための「ボクシングジム」のようなものだと表現した。在中ドイツ商工会も、中国に知識と専門性を移転するだけでなく、本国に環流させる双方向の動きを観察した。
各国が中国を信頼しているわけでなくとも吸い寄せられているのが実態だ。2025年末から本年初頭にかけて英・仏・独・加などの首脳が相次いで訪中した。スターマー(当時)は英首相として8年ぶりの訪中で、アストラゼネカは今後4年で150億ドルの対中投資を表明した。ドイツ首相のメルツは約30人の経営者を帯同し、前任のショルツが使った「システミック・ライバル」という、中国の国際的振る舞いを牽制する表現を避けた。経済安全保障を熱心に説くアメリカでさえ、2026年1月にトランプが講演で「中国を入れてやれ」と中国からの投資に前向きな発言を行ったが、5月の訪中でも多くのビジネスリーダーを引き連れ、習近平との交渉に直接付き添ったとも言われる。
中国経済の強みは、個別企業の成功というより、技術が産業間を回る仕組みにある。米議会に提出された米中経済・安全保障調査委員会の報告書は、これを「イノベーションが連動するフライホイール(弾み車)」と呼ぶ。たとえばEVで磨かれたバッテリー、モーター、冷却系、低価格部品、自動運転ソフトは、ヒューマノイドロボットへ転用される。中国製部品を使えばロボットの単価を3分の2削減できるとの試算もある。研究室の発見を工場へ移し、工場での改良を次の産業へ回す。中国の競争力はこの循環の速さにある。
こうした強い経済力を背景に、中国は世界を惹きつけようともしている。例えば最近では、アフリカの多くの国への関税ゼロ政策が象徴的だ。アジアでも、環太平洋経済連携協定(CPTPP)に非加盟の中国が、2026年5月のAPEC貿易相会合の議長国という立場を利用して、加盟各国を事前の承認なく招く形で「RCEP・CPTPPメンバー対話」を開催した。加盟国の一部は不参加で応じた...
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中国への日本人の誤解
日本には、中国に関して三つの負のイメージがあるように見える。実のところ、中国専門家ですら、こうしたイメージを繰り返し再生産したりもする。第一に、中国経済は破綻に向かっている。第二に、中国では権力闘争が常に激しく、また最近では軍との関係にも緊張が見られ、それが危機につながりかねない。第三に、国際的には孤立を深めている。こうした決めつけは、必ずしも正しくない。今回は中国の実像に迫ってこれらのイメージを検証する。そこから見えてくる本当の中国の危うさは、習近平の下で国家の物理的な強靭さを高める一方で、判断の修正を行うための柔軟さに欠け、世界情勢の見極めにも誤算の余地を残すことにある。それが私たちの底線を破りかねない。
中国経済は、確かに近年、全てが順風満帆というわけではない。不動産がその典型例だ。しかし、依然として強さもある。科学技術のエコシステムは、アメリカが舌を巻くほど良く構築されている。中速に成長する製造・技術大国と、低温の家計・不動産・民間経済が同居していると考えるのがよいだろう。
GDP成長率は、今年上半期で4.7%。付加価値額でみると装備製造業は9.3%増、ハイテク製造業は13.3%増である一方、不動産開発投資は減少し、民間投資やインフラ投資も減少を見せている。それは、中国政府自身が認めているところだ。
中国経済の強み
しかし、戦略産業の生産力、外国企業を引き留める競争環境は確かなものだ。中国の製造業の付加価値シェアは2024年に世界の32%に達している。多国籍企業は、中国内に残りつつ、中国外にも拠点を増設するように動いている。中国市場向けの事業は中国内部で完結させ、中国外の市場向けには、中国以外の供給・生産能力を増やす。そして中国内では、中国企業との連携を深めている。一見すると矛盾したこの動きの背景には、「中国で戦わなければいけない」という強い確信がある。中国が安い生産拠点ということではない。中国で中国企業と競り合うことが、世界で中国企業と競争するための学習の場になると考えている。米中ビジネス評議会は、中国は企業のための「ボクシングジム」のようなものだと表現した。在中ドイツ商工会も、中国に知識と専門性を移転するだけでなく、本国に環流させる双方向の動きを観察した。
各国が中国を信頼しているわけでなくとも吸い寄せられているのが実態だ。2025年末から本年初頭にかけて英・仏・独・加などの首脳が相次いで訪中した。スターマー(当時)は英首相として8年ぶりの訪中で、アストラゼネカは今後4年で150億ドルの対中投資を表明した。ドイツ首相のメルツは約30人の経営者を帯同し、前任のショルツが使った「システミック・ライバル」という、中国の国際的振る舞いを牽制する表現を避けた。経済安全保障を熱心に説くアメリカでさえ、2026年1月にトランプが講演で「中国を入れてやれ」と中国からの投資に前向きな発言を行ったが、5月の訪中でも多くのビジネスリーダーを引き連れ、習近平との交渉に直接付き添ったとも言われる。
中国経済の強みは、個別企業の成功というより、技術が産業間を回る仕組みにある。米議会に提出された米中経済・安全保障調査委員会の報告書は、これを「イノベーションが連動するフライホイール(弾み車)」と呼ぶ。たとえばEVで磨かれたバッテリー、モーター、冷却系、低価格部品、自動運転ソフトは、ヒューマノイドロボットへ転用される。中国製部品を使えばロボットの単価を3分の2削減できるとの試算もある。研究室の発見を工場へ移し、工場での改良を次の産業へ回す。中国の競争力はこの循環の速さにある。
こうした強い経済力を背景に、中国は世界を惹きつけようともしている。例えば最近では、アフリカの多くの国への関税ゼロ政策が象徴的だ。アジアでも、環太平洋経済連携協定(CPTPP)に非加盟の中国が、2026年5月のAPEC貿易相会合の議長国という立場を利用して、加盟各国を事前の承認なく招く形で「RCEP・CPTPPメンバー対話」を開催した。加盟国の一部は不参加で応じた...
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